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初のRoseraie/バラ園
かつてバラに恋をしたひとりのフランス人がいた。私財を投じてバラの庭園をつくり、その地はパリ近郊各所のバラ園の原型となった。男性の名は Jules Gravereaux ジュール・グラヴロー。

パリ南郊外、Val-de-Marne県のL'Haÿ-les-Roses / ライ・レ・ローズ市にあるこの庭園は、1894年にグラヴローがセールスディレクターとして勤めていたパリの老舗デパート、ボン マルシェを退職し、自己の財産を注ぎ込み数年かけて妻へのプレゼント、そして自身のバラ栽培のために作り上げた。
当時ボン マルシェの創立者夫妻には財産を譲渡する子孫がいなかったため、それらは従業員に分け与えられた。創業当初から勤務していたグラヴローは、相当な額をうけとり、44歳で退職する。
その資金と自身の財産を投じて土地を購入、主要品種のバラの採取研究をはじめる。そして、「初のバラだけのRoseraie/バラ園」を計画し、1899年に当時ヨーロッパ諸国の数々の公園や庭園、都市の設計に携わった著名な造園家・ランドスケープデザイナー、エドゥアール・アンドレに依頼した。
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さまざまな品種のバラが咲き誇る


バラと共に生きる日々、1900年には、フランス皇帝ナポレオン1世の妻ジョゼフィーヌが愛したバラのコレクションのあるマルメゾン城のバラ園の再構築、パリのバガテル公園やエリゼ宮のバラ園も手がけた。またフランス農業省から原種や野生のバラ、園芸用と香りあるバラの新品種、フランスのバラの香料市場発展のための研究調査依頼を受けバルカン半島へも渡った。競合ブルガリアンローズを研究し、その結果蒸留方式の改善、フランスの風土に適した品種改良などの成果を残した。

そよ風にのってバラの香りが辺り一面に漂う園。現在は、Val-de-Marneの県立のバラ園としてバラの開花期に公開されている。
およそ1.52ヘクタールの敷地は、テーマごとに区分けされ、色とりどり約3300種ものバラが植えられている。中には樹齢約70年というローズの大樹も。とりわけクラヴローの研究の成果ともいえる、原種や香りのバラが多くみられる。
多くの調香師達も様々なローズを香りにやってくるという。言わば屋外の本物のラボラトワールだ。
香料用として栽培されているRose de Damas/ ダマスカスローズ、深みのある香りが特徴のNuit d'Orient / ニュイドリエントなどはぜひ直に香ってみていただきたい。

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左: 新色のバラをつくるための、枝と枝をカットし、接合する
右: まったく違う色のバラが新たに咲くことも


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左: 香料用のバラとして栽培されているRose de Damas
右: 深みのある芳香のNuit d'Orient

生涯にわたりバラに情熱をかたむける
1901年にグラヴローが新たにつくったRose à parfum de L’Haÿという品種は、街の名前を冠した、素朴ながらも芳香が強く、美味しそうな香り。またバラ栽培家Cochet-Cochetの協力のもと姉妹品種としてRoseraie de L’Haÿが開発された。このバラから採取した精油は収益性の高いものだったが、グラヴローは、経済的目的のために働くことから自ら退いた。金銭を目的としない純粋にバラを愛する研究者らしいエピソードだ。

その後、1914年に街の名前 L'Haÿ / ライは、『ローズのライ ー L'Haÿ-les-Roses ライ・レ・ローズ』に改名され、ここは街のシンボルともいえるバラ園となった。グラヴローは、フランスのバラの研究、栽培などの功績を讃えられ、レジオンドヌール勲章を授賞した。

つるバラがからまるいくつものアーチをくぐると漂うバラの香り。1世紀以上前にグラヴローが注いだバラへの熱い情熱が受け継がれている。香り豊かなバラの庭園、ぜひ満開のシーズンに訪れたいスポットだ。


La Roseraie du Val-de-Marne
Rue Watel L'Haÿ-les-Roses 94240
TEL: 01 43 99 82 80
開園期間: 5月初旬~9月中旬
年によって開園期間が変わります。事前にウエブサイト等でご確認下さい。

入園料: 一般料金3ユーロ/子ども・60歳以上・15名以上の団体 1.5ユーロ
http://www.roseraieduvaldemarne.com/
左: 園内のジュール・グラヴローの像
右: グラヴローが収集した原種のバラが数多くみられる



 
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