四季折々の植物の話。



仏 Jasmin / 英 Jasmine

南仏の夏を芳しく彩る、ジャスミン(フランス語読みではジャスマン)。香りの王・女王とも呼ばれ、ローズと並んで重要な香料として、さまざまな香水に用いられている。15世紀にペルシアからヨーロッパに伝えられたとされ、 現在はスペイン、イタリアなど気候風土のよい地中海沿岸、モロッコ、エジプト、インドなど でも栽培されている。

モクセイ科ソケイ属のジャスミンには100以上の種類があり、中国のものは茉莉花(マツリカ)。 多くは風味付けに使われ、つぼみのうちに摘まれた花を烏龍茶と混ぜたやわらかい香りと 味わいのジャスミン茶は中国をはじめとするアジア諸国で親しまれている。

香料として採取されたものはジャスミン・アブソリュートと呼ばれ、甘く深みのある強いフローラル調に、フルーティ、グリーン、パウダリー、さらに微量のアニマル調の香りが官能を誘う。フランスのグラース産のジャスミンが最高品質といわれており、収穫は7〜11月頃、花の開ききった明け方に、人の手によって摘まれる。時期や天候により香りの質が変わる。太陽の照りつける暑い日の方が、風の強い日よりも収穫量が多いそうだ。8月に収穫されたものが最も良質で、インドールというアニマル調がより香る。800〜1000kgもの花からほんの1キロの香料しか採取できないため、非常に高価な原料して扱われている。アロマテラピーでは、その優雅でエキゾチックな香りが、心に和らぎをあたえ、婦人科系のバランスの調整、肌の保湿などにも役立てられている。

香水の世界では必要不可欠なジャスミンの甘美な香りは、リッチフローラルタイプに属し、花の優美なラグジュアリー感、エキゾチックさや官能、ミステリアスなムードなどを表現する。様々な香調とよく調和し、香りに華麗さ、広がりを与える。香水の歴史に名を連ねる名香にも度々登場するジャスミンは、時代を超えて愛される憧れの香り。 ジャスマンをもちいた香水の中で、30年間のロングヒットのFirst/ ファースト(ヴァンクリーフ&アーペル)(1976年)は、宝石ブランド初の香水、香りのジュエリーとして発売された。ジャスミンをはじめとするフローラルが女性 の真の美を表現。クラシカルな定番香水として現在も多くのファンを持つ。
2009年に発売されたシャネルのエクスクルーシブコレクション、BEIGE / ベージュ(シャネル)はココシャネルの愛したベージュ色をテーマにした金色に輝くハニーに純白の花のブーケのイメージ。ジャスミンも香るフローラル・フルーティタイプ。

南フランスの夏、さわやかな風に揺れる小さな白い花、あふれだすその華麗で艶やかな香りは、多くの人々を魅了する。

 

 
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