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伝説に残る有名なサロンがクリスタルの館に
20世紀の前半、ここにはパリの知識階層に最も人気のあるサロンのひとつがあった。Marie-Laure de Noailles/ 貴族 ノアイユ夫人は自邸を画家、作家、音楽家の集まる場として提供し、数々のパーティを催していた。夫妻は多くの芸術家を支援し、ジャン・コクトー、サルバドール・ダリやマン・レイも訪れたという。その華麗な邸宅をフィリップ・スタルクがバカラのために巧みに改装した。3000㎡の敷地内にオフィス、ブティック、ギャラリーミュージアム、レストラン、ボールルームが集約され、1764年創設のバカラの歴史、過去の傑作から最新のコレクションまで、豪奢なクリスタルの世界をスタルクの粋な演出とともに満喫できるスポットである。

出迎えるのは大きな暖炉と水に浮かぶクリスタルのシャンデリア。星のように光を埋め込まれた絨毯が、幻想のクリスタルパレスへと導く。照明をおとした空間に、クリスタルの透明の輝きとカットの織りなす反射が美しい。ブティックには、テーブルウエア、花器、キャンドルホルダーなどのコレクションがきらびやかに並ぶ。クリエイターの限定品にも注目。その奥はプライベートサロンのような雰囲気。優雅な気分でビジュウを選ぶことができる。ディスプレイに使われている手鏡にもスタルクの遊び心が感じられる。館内にはスタルクのデザインによるオブジェや家具が配され、気をつけて見ると随所にウイットなユーモアが効いていて楽しい。

ブティックの上階、かつてノアイユ夫妻のダイニングルームだった場所は、レストラン「クリスタルルーム」として使われている。当時のデザインを残しながら、モダンなタッチを加えて大胆に改装。その隣がギャラリーミュージアムだ。


Galerie-Musée Baccarat / ギャラリーミュージアム
メゾンの技術、クリエイションの歴史を語る莫大な所蔵品の一部が厳選して展示されている。フランス内外の王室、著名人から特注された逸品など一級の美術品を鑑賞することができる。Gérard Garouste/ ジェラール・ガルーストによる天蓋画は、クリスタルの製造に必須の水(緑)、土(黒)、空気(青)、火(赤)の4要素とそのシンボルカラーをテーマに描かれている。ボールルームは18世紀のイタリアの宮殿のイメージ。奥の大画面ではクリスタルガラスの製造工程の映像を流している。

ギャラリーミュージアムでは2008年5月17日まで特別展「Baccarat et les années 20」を開催中。Roaring Twentiesの影響を受けた、多彩な様式の芸術的遺産ともいうべき名作 380点を紹介している。この時代に新たなステージを迎えた香水のフラコンも数多く展示されている香水好きにはうれしい特別展だ。モダニティ、新しいスタイル、多様な文化が誕生し人々をワクワクさせた1920年代に想いを馳せて。


装飾美術とラグジュアリービジネスの輝かしい時代
第一次世界大戦の終結から1929年に世界恐慌が発生するまでのRoaring Twentiesはバカラの繁栄の時代を象徴する。経済は急成長し、自動車、電話、航空機などの発明が普及した技術の黄金時代。1920年代は、装飾美術とラグジュアリービジネスにとっても特別なエポックであった。1925年パリ装飾芸術博覧会以降、アールデコという用語が使われるようになり、その様式はさまざまな芸術分野に取り入れられた。究極の贅沢を追求するために、高価な材料を使い、洗練された造形デザインが生み出され、匠のわざが惜しみなく用いられ、多くの傑作が誕生した装飾芸術の歴史に残る時代である。バカラも多大な創意工夫を凝らし、ブランドノウハウの真髄であるグラヴュール、カッティング、ギルディング、エナメル、オパールクリスタル、ブラッククリスタルなどの技術と革新的なデザインとのコンビネーションにより数々の名作を創り出した。クリスタルの魅力と、卓越した技術にインスパイヤされた各分野の偉大な芸術家達がバカラに参加したという。


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下:13m長、スタルクデザインのテーブル


上:
キュレーターのMichaela LERCH




 
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