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パリから旬のエッセンスをお届けします。
ジャスミンの花を摘みながら恵まれた気候風土を体感
Le Domaine de Manonは3代続く、ローズ ド メ、ジャスミンなどの香料植物を栽培しているファミリー。花の咲く時期にはガイドツアーを行っていて、畑を見学しながら、風土、花の育て方、香料や香水の歴史について説明を聞くことができる。
「この地域は 海と山のコリドー。南は美しい紺碧海岸が続き、内陸に少し足を延ばせばアルプスの山々が臨める。夏は陽光にあふれ、冬から春先にかけてはミストラルが吹き荒れる日も。澄んだ空気と、地形、風土が香料植物の栽培に最適なのです。春夏秋冬それぞれの気温、湿度の組み合わせもちょうどよいのでしょう」と遠くに連なる山々に目をやりながら語るCarole。
「ゲラン、ジャンパトゥ、エルメス、ディオールなど数々の名作がグラースで生まれています。CHANEL N°5(シャネル)もグラースで開発されました。」と続ける。「ビター・オレンジからとれるネロリオイルは16世紀初頭にグラースで作られ、その後、バラ、ジャスミン、チュベローズ、ラベンダーなどが次々と栽培されるようになりました。やがて、自然の植物の放つ豊かな香りは人々の暮らしに入り込んでいきました。そして芳しい香りを自分のそばにおいておきたいという思いから精油技術が発達したのだと思います。」
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グラースの街から東に約7kmにある香料植物の畑


見渡す限りの広い青空、太陽はまぶしく照りつけるが、空気が乾燥しているためか気温ほどの暑さは感じない。時折風にのって漂うジャスミンの香りは濃厚で艶やかだがさわやか。木陰に入ればひんやりするほど涼しく、日向とのコントラストが気持ちいい。ジャスミンの香料を1L作るために、約800kg~1000Kgの小さな白い花が必要だそうだ。その量の花を手摘みで採るためには大変な人手と時間を要するだろう。グラース産の香料が数百万円/kgというのも納得できる。 1930年代、Rose centifolis 3,000トン Jasmin Grandiflorum 1,800トンだった生産量は今では激変し、10分の1以下となってしまったそうだ。

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ガイドの時期、日時は開花状況により変更されます。必ず事前にお問い合わせください。
Le Domaine de Manon
36,chemin du Servan Plascassier Village 06130 GRASSE
TEL 04 93 60 12 76

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当時、畑で摘み取られた花から精油を採るために使われていた


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昔ながらの水路と石造りの池の中間に、水路に囲まれた畑、小さな運河が流れている。
左:Gabriel 8月には、夜に甘い香りを漂わせるチュベローズの花の香りを味わうナイトツアー Flower of the night も行っている。
植物園では「香りのツアー」を
La bastide du parfumeur JARDIN BOTANIQUE は、グラース市内から約8Km、Mouans-Sartoux にある非営利アソシエーション。2ヘクタールの土地に約200種の芳香植物を集め、伝統的な手法で栽培している植物園。畑を見学する「香りのツアー」に参加することもできる。、ミント/アニス、ホワイトフラワー、バニラ、フルーツ、アロマティック、グリーン、エスペリデと香調別に分けられているゾーンには、それぞれの香りのノートに使われる複数の芳香植物が植えられている。現在はこの地域で栽培されなくなった植物もみることができる。


ガブリエルによる南フランス花暦
1月後半〜2月: ミモザ、アーモンドの花
3月~4月: スミレ、リラ、黄水仙 ローズマリー
5月~6月 ローズ ド グラース、ローズ サンティフォリア、ゼラニウム
6月後半~
7月~8月:
ラベンダー、ジャスミン、チュベローズ
8月~9月: オレンジフラワー、サルビアエレガンス、スイカズラ
10月~: イリス
11月: Chrysanthème/菊
12月: Rose de Noël/クリスマスローズ
訪問は多くの花が見られる5月~9月がおすすめ

La Bastide du Parfumeur
979, chemin des Gourettes 06370 Mouans-Sartoux
TEL: 04 92 98 92 69
営業: 火~土(日)(季節により異なる)クリスマス時期~2月上旬は休園 一般向けガイドツアーは毎週土曜日。
変更の可能性有、必ず事前にお問い合わせください。

http://www.labastideduparfumeur.com/gen.php3?id_rubrique=111


グラース旧市街のいま
旧市街には 中世の大聖堂、司教館、貴族の邸宅などの建物も残っている。散策しながら、公開されている香水工場に立ち寄り、ガイドツアーに参加するのも楽しい。ガイドに香水の製造技術、プロセスの説明を聞きながらの見学は香水の文化的背景を知ることもでき興味深い。

見学できる香水工場
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右上:Cathédrale Notre Dame du Puy 大聖堂は中世から18世紀までの様式がみられる。ルーベンスの宗教画も展示。左下:香料産業に栄えた頃の雰囲気を伝える
Grasse01 Fragonard/ フラゴナール
20 boulevard Fragonard
06130 GRASSE
TEL: 04 93 36 44 65
http://www.fragonard.com

Grasse01 MOLINARD/ モリナール
60, boulevard Victor Hugo
06130 GRASSE
TEL: 04 92 42 33 11
http://www.molinard.com
GALIMARD/ ガリマール http://www.galimard.com/html/intro.html
73, Route de Cannes 06139 GRASSE
TEL: 04 93 09 30 00


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香りの歴史とコレクションが堪能できる、国際香水博物
18世紀の貴族の邸宅だった建物が改装され、フランスの伝統的産業のひとつである香水をテーマにし5万点ものコレクションが展示されている。古代から現代まで4000年にわたる香水の歴史、香料、香水の製造工程、パフュームリーの歴史、功績などをみることができる。さまざまな時代の香水フラコンのコレクションもすばらしい。グラースが大きな役割を果たした19世紀の香水産業をテーマにした展示室もある。
Musée International de la Parfumerie /国際香水博物館
8, Place du Cours 06130 GRASSE
TEL: 04 97 05 58 00
http://www.museesdegrasse.com



香り立つ花に彩られ、さわやかな風抜ける南フランスの地へ
香料植物の栽培と収穫は、次第に土地や人件費の安い国へと移行していて、フランスの生産量は次第に減っている。 自然の花の生み出す香りは、濃厚、エネルギッシュでありながら、まろやか。完成された美しい自然の産物だが、天然香料は世界的に限りがあり、コストをかけても大量に調達できる種類のものではない。かつてはグラース周辺に近づくと花の香りに包まれ、街には香料工場からの香りが漂い、ほとんどすべての人が香料関連の仕事に携わっていたと言われる。現在は様変わりしているが、多くの調香師がグラース出身で、現在もその近郊にアトリエを構えている。調香師は、目指す香りのクリエイションのために、常に最高級の香料、イメージを具現化する良質の香料を探し求めている。グラース周辺が香りの創作にこの上なく調和する土地と評価されている理由は、香料植物に最適な気候風土と、澄んだ空気、誰もが魅了される眼下にひろがる眺望、カンヌやニースのビーチの華やかな雰囲気とのバランスのよさなのであろう。天然香料のメッカとして、香料の歴史と伝統が背景にあり、多くの偉大な調香師、数々の名香を輩出したこの地が、今なお 香りを愛する人々の憧れの地であることに変わりはない。



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